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市役所で働く前に知りたかったことは?〜人事異動編

 こんにちは、人事課Sです。
 今回は職員ガイダンスなどでよく質問を受ける「人事異動」に関するお話です。ガイダンスなどで人事異動についてのお話に触れるときは、よく「人事異動をすると転職したかのよう」とお話しています。市役所の仕事は様々あるので、この異動が大変な一方、それまで自分が触れてこなかった分野に関わって経験を積むことができ、視野も広がります。今回は、公務員にはつきものの人事異動について少し掘り下げてみようと、現在14年目、市民税課のAさんにお話を聞いてみました。
 秋田市役所で約2,500人働く中の一例としてご覧ください。
 それでは、どうぞ💁


🌾Aさんのこれまでの異動歴を教えてください。

 平成23年に行政職として採用され、人事課、財政課といった内部管理部門から、納税課、保護第二課といった対住民の最前線まで、幅広く経験してきました。
 また、一風変わった異動先として、令和2年度から内閣府へ3年間派遣となり、地方創生という国施策のメインテーマに深く携わることもできました。
 現在は市民税課にて、事業所税や法人市民税といった諸税の賦課業務、日々の窓口対応にあたっています。
 14年間で6か所目の配属先となり、平均より多くの異動を経験しているかと思います。感覚の話になってしまいますが、一般的な異動スパンはだいたい3〜5年といった印象です。もちろん、それより長い場合も、短い場合もあります。
 ※参考 秋田市の組織・機構

🌾率直に聞きます。異動って大変ですか?

 私が経験した最初の異動は納税課から人事課でしたが、これまでの14年間でこのタイミングが一番大変な思いをしたような記憶があります。
 その大変な思いを深堀すると、「税という専門性の高い職場」→「人事という市役所内部全体を司る職場」への環境の変化にあったかと振り返ります。職員全体を網羅する人事制度の設計や運用、職員の労務管理に至るまで、日々の一つ一つの業務が目新しく、仕事も溜まっていく一方でした。
 ミスや失敗を多く経験したのも、人事課時代でした。ですが私は人に恵まれて、都度、上司が優しく、時には厳しい指導もいただきましたが、その後のフォローまで手厚くしてもらったこともあり、人を大切にし、育てていく「愛」のようなものを感じる職場でした。同時に、こんな上司になりたいという理想像なんかも作り上げられた気がします。
 公務員として働く上では、「異動」の可能性は常についてまわるものです。長い市役所人生の中では、内部管理部門、窓口部門の行き来する可能性は高いものですので、若いうちに双方を経験できたのは大きな財産となりました。
 そして異動は未経験分野へ飛び込んでいくものなので、誰しもが大変な経験をするかと思います。ですが、長期的に考えるとポジティブな側面が強いと私は感じていて、これまでの異動経験が後々になって有機的に繋がり、自身の「考える幅」を拡げてくれています。
 例えば・・・

まちの賑わい創出や中心市街地活性化に向けた取組が急務
(内閣府地方創生)

住民の満足度の高いまちを形成していくには、現場目線が大事
(保護第二課、納税課)

住民の生活基盤を維持するための施策には、自治体運営の基盤たる
お金の問題は重要(財政課・市民税課)

これらを担っていく自治体の健全な組織運営
(人事課)

といったように、すべての業務経験が何らかの繋がりを持つものと考えています。

🌾異動の希望を出すことはできますか?

 毎年秋頃に異動希望の調査があり、希望する異動先を第3希望まで、自由に記載することができます。逆に、希望しないことの記載もできます。
 私は14年間で2度、希望の課所室を書いたことがありますが、叶ったのは1度です。周囲の職員の話を聞く限り、異動希望がそのまま叶うケースは多くはない・・・印象があります。希望が叶ったら嬉しいことではありますが、叶わないことが必ずしも悪いことでなくて、前述したとおり、自身の幅が拡がるいい機会だと思います。
 長い公務員生活を展望すると、次はどんな職場で、どんな経験を積みたいかということを考えるのは、自身のキャリア形成にとって大変有意義なことだと思います。アンテナを高くして、同僚や同期の仲間などから情報収集するのも大切かもしれません。

🌾ちなみに、国ではどういった仕事を?

 地方創生に関連する業務を複数担当しましたが、メインで担ったのは「中心市街地活性化の推進」です。
 モータリゼーションの進展により、平成初期から郊外型の商業施設が目まぐるしく発展した中、かつての「まちの顔」であった中心市街地を再活性化していくために、全国自治体の取組を後押ししていく、といった業務でした。
 具体的な内容は、自治体計画の策定支援やアドバイザリー業務です。各省庁の国補助金制度の紹介や、国内外のまちづくり成功事例を交えながら、自治体に合わせてオーダーメイド型で支援していくといったものです。
 3年間で約40か所の地域に出向いて生の声を聞くことで、全国各地が歩んできた歴史やルーツ、文化を伴ってそれぞれのまちがそれぞれの魅力をもって存在していること、それと同時に、課題も全国に山積みしていることがわかりました。
 これらの経験から、秋田市を外から見た時に感じた課題についても真剣に考えるようになりました。それは市職員としてというよりも、私自身が秋田市民として、住むまちを自分事として考える大きなきっかけとなりました。
 また、派遣中は他自治体からの派遣職員をはじめ、民間からの出向者、各中央省庁の官僚たちと関わったネットワークが生き、秋田市へ帰任後も様々な機会で助けられることがありました。
 秋田市から外部への異動(派遣)というのは、内閣府のほか、秋田県庁、秋田観光コンベンション協会、秋田県観光連盟といった異動先があり(令和6年度現在)、それぞれの業務経験と人脈が広がることが期待できそうで、魅力ある異動先の一つだと思います。

🌾これまで仕事で苦労した時はどうやって乗り切りましたか?

 国に派遣されたときは、事前に聞いていた噂どおり、大変な思いはしました。具体的には「業務量&質」、それと「人との関係性」です。
 業務の質でいくと、国会対応は最たるものですが、日々の業務でも例えば通知一つを発するにしても、誤りがあれば全国に混乱を招いてしまう可能性もある業務ということもあり、気を使うことが多くありました。
 人との関係性というところでは、今だから言えることですが、関わる人(上司や他省庁の官僚など)は、言葉を選ばずに直接的な表現をすると、どこか冷たい雰囲気がある人が多いように思えて、赴任後の半年間は苦労した記憶があります(もちろん、冷たい人だけではありませんが・・・同時に秋田の人の優しさに改めて気づきました)。
 これらを乗り切った要素は大きく2つあります。
 1点目は関わる目の前の人、すべてに対して「少しの手間、多くの感動」を意識したことです。仕事をする上でも、その仕事の奥には施策を動かしている職員、人がいます。徹底的に対人関係を、ずるい言い方ですが「懐に入る」ことを意識しました。「give」を続けることで、相手の態度が軟化し、業務が円滑に進むことが多かったと思います。
 2点目は業務以外での仲間の存在です。秋田市に入所して以来、市役所野球部に入部して活動していましたが、派遣中は東京のクラブチームに所属して活動していました。日々の業務で悩んだことがあっても、週末になればグラウンドへ行き、全く別の業界で生きる野球仲間たちと、「野球」という共通言語を通じて関係を深め合う・・・その中で、自分の悩みの小ささに気付かされる・・・ということが何度もありました。悩みや不安があるとどうしても視野狭窄に陥りがちですが、心と頭をニュートラルに戻してくれる「仕事以外での生活の軸」をつくることは本当に大事です。

🌾「仕事以外での生活の軸」はAさんの場合は野球なんですね。

 内閣府派遣から復帰後も秋田市役所野球部にて活動しており、週3回ほど練習や試合に参加して汗を流しています。近年は新しく加入してくれるメンバーが好調で、令和5年度入所は2名、令和6年度入所は3名が加わり、若手から中堅まで、総勢20名程度で活動しています。
 単なるアフター5の活動と思われがちですが、野球から学ぶ「組織のあり方」や「個のモチベーションの引き出し方」、「プレッシャーへの対峙」など業務にも通ずることが非常に多いと感じています。

 蛇足ですが、秋田市役所野球部では令和5年度からインスタグラムを開設し、日々の活動を発信していますのでご紹介させていただきます。
 公務員の甲子園大会と呼ばれる全国官公庁野球大会や自治労野球大会のほか、国体予選や天皇杯予選といった大会に参加しています。また、大会で勝ち進むと東北六県への遠征の他に東京での全国大会、また過去には甲子園球場で試合をするといった貴重な経験もありました。今年の全国大会は沖縄県で開催されることもあり、例年以上にチームが一丸となっている印象を受けます。
 チームメンバーは大学野球経験者から高校野球未経験者まで、幅広く在籍しています。部員、マネージャーともに採用試験合格の際にはぜひ気軽にお声がけください。

🌾受験を検討している方へ、一言お願いします!

 私自身が学生の頃に採用試験を受けた時の経験、人事課で採用に携わった経験からお伝えします。
 14年前、私は漠然と「地元に帰れればOK!」といった気持ちで受験していましたが、同じような方も多いと思います。しかしそれも立派な「志望動機」であり、そもそも地元を想う気持ちが根底に無ければ、住民生活の基盤を担っていく自治体職員にはなじまないと考えます。
 そして(多少の憶測を含みますが)、採用試験での面接官も、人間です。「この受験者と一緒に仕事をしたいか」という視点で見ているはずで、それは未来永劫、今も昔も変わらない・・・と私は考えています。
 最後に、採用試験後の市役所ライフをより充実したものにするための3つの要素「チームワーク」「フットワーク」「ネットワーク」の大切さを伝えたいと思います。
 全庁職員約2,500人の中で、異動を伴いながら業務を進めていく上では、職員同士の繋がり、信頼関係が何よりも大切です。そして近年では、行政の担う守備範囲が年々広がっている中でも、時代に要求されるスピード感はより一層高いものがあります。
 対住民はもちろんのこと、対仲間というマインドを大切にできる人にとっては、やりがいがあり、円滑に業務が進められ、かつ働きやすい職場だと思いますので、秋田市職員採用試験へのチャレンジを強くおすすめします!